【腰痛症】
これといって楽な姿勢はない腰痛症受傷以外に単一の原因を明確に指摘することは困難であるし、多くは姿勢異常・筋や骨などに老化を起こすとか、職業とか日常生活動作に不適であるかによって発症するものが多い。時によって子宮癌、子宮筋腫などによって、腰痛を訴える場合があるが、それらは基礎疾患を治療すれば解消する。ひと昔には、若い者が「腰が痛い」と言ったら冷やかされたものだが、最近の腰痛症は冗談も言えなくなった。一般家庭にも高性能な車両が普及したり交通の発達のため世の中すべてが便利になり腰痛症は増える一方だ。こともあろうに学童の低学年にも多発している。それが、それが姿勢の問題だと決めつける訳にはいかないが、脊髄側彎症にも発展し今や大きな社会問題である。
さまざまな腰痛症の原因の中から、腰部の椎間関節周囲の組織に起因する腰痛症を主に説明しておこう。ちょうど、餅をつく臼の形をした骨体を椎骨といい、その椎間にある軟骨が椎間板である。そしてこの椎間板はクッションの働きをもって、骨体の接触を防ぎ脊髄神経に及ぼすショツクもこの椎間板によって保護される。よく聞く言葉ではあるが「腰がまがる」と俗にいう。関節の構造上、骨が曲がりはしないし「姿勢がまがる」のである。骨格をよく観察すると、そう簡単に移動する構造ではない。例えば、腰部を前方に屈曲するのは、股関節が屈曲軸になっていいる。
恐らく、腰痛症にかかると整形外科に行って、まずレントゲン写真を撮影して診断を受けるわけである。レントゲンを主治医から説明されて、あなたの場合は「腰のヘルニヤ」ですよと言われるとショック。「当分牽引して、経過によっては手術しましょう」になると、本人はダブルショックを受けて、精神的なパニックにおちいる。実は、こういう外来患者が刺針療法を受けにくるのである。
外来者の中には、牽引療法を受けて「腰痛の経過には変化がないのに、足にシビレが生じた」と言う例も少なくない。これも、牽引すれば牽引力の強い方がよいと言うものではない。いずれにしても、筋弛緩剤が投与されるのであるが、経口薬の場合は腰部のどのあたりに疼痛があろうと、どのような姿勢の角度で運動痛があろうと一向にかまわない。ところが、神経ブロックや刺針療法はそうわいかない。
刺針療法の場合は、時によっては左右相対的なポイントに刺針するが、疼痛部位は確実に把握しておかなければならない。疼痛部位以外に、むやみやたらに刺針をしていたら「そこは痛くありませんよ・」と言われる。やはり、患者に納得してもらうためには、刺針針処置によって痛みが軽減することである。こちらとしても、例えば
゛ぎっくり腰のような激痛を全く症状の軽減なしに帰宅してもらっても困る。従って、歩行に支障のない程度まで処理しておかなければならない訳だ。また、都合のよいことに、疼痛が軽減できるまで反復して治療できるところが刺針療法であるから可能なのだ。
さて、レントゲン撮影で椎間板に異常が確認されたからといって椎間板が勝手に移動したのではない。それには、骨格筋の立体分布が異常なことも、臨床的には重要なのだ。承知の如く、レントゲンには筋組織はうつらない。そこで、各筋肉のつりあいが問題になる。たとえば、東京タワーのようなもので、台風が来ても、地震にゆられても鉄筋構造が外的環境に従って流動的に計算されている。そして、外的環境が平常になれば、もとの東京タワーであり、維持管理がよければ幾世紀でも耐えられる。治療指針は、骨格の分布から判断すれば、いわば東京タワーの脚のつりあいを調整すると理解すればいたって簡単だ。後は、疼痛が緩和するのを待てばよい。