膝の病気には、さまざまな原因によって関節痛を訴えるわけだが、俗に「膝に水がたまった」と言う膝関節水腫の原理と、その処置刺針を述べておこう。この病気の予後は、生活様式の改善がない限り、徐々に関節が変形してくる「変形性関節症」に移行する。
老化現象の一つと考えられていいるが、関節水腫を発症した時点でうまく治しておくと、その後の生活様式を改善、また無理な負荷を与えないように管理してやると変形はさけられる。 よく関節水腫の患者に、回復後のアドバイスをしておくのだが、特に体重の重い肥満は管理が難しい。この肥満者は、心臓にも良くないし、特に運動器疾患で膝関節や足関節の水腫を起こしやすいし、発症しても治りにくいのである。それでは、膝を痛める日本人の生活様式をいくつか指摘しておこう。
(1)
生活様式―冠婚葬祭の様式は、基本的に正座であること。最近は椅子の習慣になってきているので昔ほどではないが、やはり長時間の正座はよくない。それと、和式の排便スタイルも改善したいものだ。
(2) 環境因子―地理的に平野が少なく、特に山林の農業に従事するものにとっては、膝を痛めやすい。
(3) 既往症との関係―当然、膝関節部の打撲とか捻挫の受傷があれば、過労とか極度の寒冷によって誘発される場合がある。
(4)
食生活―直接的な原因は考えられないが、先に述べた肥満症は大きな原因となるし、平常から自己の標準体重を維持するよう、食生活はよく配慮すべきだ。
病気にかかると、誰でも病気の原因がなんであるかを考えるものだ。特に、関節リユウマチ以外で病気の原因はこれだと指摘できるもののうちで、膝関節の病気はよく考えてみると必ず何か原因がある。従って、老化現象の膝関節もあり、勿論学童のような若年層にも同様な病気がある。専門の整形外科では、関節水腫があれば穿刺排液をして、その他の処置と言えば患部に湿布するか薬を服用しそれで駄目なら手術するしかない。こうした外来者のほとんどは、関節排液を5〜6回も受けると不安になりはじめ、その上、手術をしたほうがよいと言われると、刺針療法を最後の望みで受けにやってくる。
よく膝が腫れたり、健側の膝と比較して変形が著しく慢性的になると、自己診断で勝手に「関節リウマチ」だと信じている人が以外と多い。この関節リウマチの診断基準は、なかなか素人には鑑別できるものではないし、ARA(アメリカ・リウマチ協会)の基準はそう厳密ではない。ARAの診断基準は、総合的に「関節の骨膜に慢性の進行性炎症があり、その炎症には免疫異常が関与する」